マンボウの耳石(平衡砂)

 近年のマンボウ研究者の間では、マンボウ(以下マンボウ属を指す)は耳石(平衡感覚を司る器官、年齢査定にも用いられる形質)を持たないとされていますが……文献を調べてみると、実は、今から120年以上前に既に報告されています。私が調べた中で最も古い発見者はThompson(1888) です。しかし、そこには驚愕の事実が記されていました。実はマンボウ、本当に耳石を持っていないのです。どういうことかと言われると……耳石の代わりに、平衡砂を持っているのです!!

 サメ・エイなどの軟骨魚類は平衡砂を持つことが知られており、私達、ヒトも平衡砂を持っています。しかし、一般的な硬骨魚は平衡砂ではなく、耳石を持っています。マンボウが硬骨魚でありながら耳石の代わりに平衡砂を持つことは極めて珍しい生物ということになります(他にチョウザメ類は硬骨魚でありながら、耳石と平衡砂を持つ魚として知られています e.g., Carlström, 1963)。

難しい話は置いておいて、早速どんなものか見てみましょう!! 

はい、まずは三半規管です。マンボウの頭蓋骨は通常の硬骨魚と異なるため、平衡砂がある位置が違うようです。私も最初は全然見付けられませんでした。発見できたのは本当に偶然です。矢印の先にある三半規管に入った白い塊が見えるのがわかりますか? そう、これがマンボウの平衡砂の塊です(耳石の位置的には扁平石に当たります)。 
 


そして、三半規管を取り除いて中を見てみたものがこちら……恐らく日本初公開ではないかと思うのですが、こちらがマンボウの平衡砂です!! どうでしょうか? 石ではなく、砂の集まりであることがよくわかると思います。しかも透明で奇麗です。
 


 以上、世にも珍しいマンボウの平衡砂でした。



 2011年5月14日作成


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