マンボウ属の形態異常個体
世の中の多くは正常として生まれてきますが、中には奇形として生まれてくるものもいます。これは恐らく、どの生物にも共通で、マンボウ類の世界にもやはり存在します。しかし、奇形は変わったものであることは確かですが、正常個体の形態異常、つまり、個体変異のうちに入るものと言えます。種の個体変異を把握する上でも形態異常個体は重要です。しかし、これまでマンボウ類の形態異常個体を報告したものは皆無に等しいので、今回、これまでの研究の中で見られた変わった個体の写真を集めてみました。
1.背鰭短縮
通常のマンボウは背鰭と臀鰭の形、長さがほぼ同じなのですが、この個体は背鰭が臀鰭に比べて短いのがわかると思います。切られたような形跡もみられなかったので、生まれながら背鰭が短かったのではと考えています。
2.胸鰭変形
マンボウの胸鰭は通常、まんまるとした丸い形をしているのですが、たまにこの個体のように胸鰭の形が細長い個体が見られます。この個体は後部に齧られたような跡が見られたので、捕食生物に齧られた可能性も考えられます。
3.背鰭軟条配置異常
通常、鰭の軟条は一列にきれいに並ぶ(左)のですが、右の個体は軟条の位置が先端で左右にバラけていました。これはなかなか珍しい個体です。

4.舵鰭臀部側欠損
パッと見て、舵鰭が齧られているように見えますが、解剖すると舵鰭臀部を支えるものが丸ごとなかったため、先天性の異常個体と考えられました。
5.舵鰭欠損
漁獲時した時にはすでに舵鰭が丸ごと無く、再生したような風に見えることから何らかの捕食生物に襲われたものと考えられます。それにしても舵鰭が無いままここまで巨大に成長したのはすごいですね。
6.人為的な損傷
漁獲時した時にはすでに体に傷があった個体です。捕食されるにしては不自然な形の傷をしていることから、人為的に傷付けられ、海に返された後、生き残って再び定置網に入ってきたものと思われました。

7.精巣肥大
小型個体の精巣が通常より膨れていると思って切ってみたら……なんと中から寄生虫が出てきたではありませんか。これはさすがに驚きました。男性は想像しただけでも恐ろしいですね・・・
以上、私が研究中に出会った形態異常個体を紹介しました。この知見は紀要に詳しくまとめていますので、ご興味があれば、そちらも読んでみて下さい。
2011年5月14日作成
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