マンボウ科には仔稚魚期から尾鰭は無い

 マンボウ類の尾鰭に見える部分は現在では一般的に「舵鰭(clavus / pseudo-caudal)」と呼ばれています。マンボウ類は仔稚魚期から尾鰭が無いことはJohnson and Britz (2005)の稚魚研究で証明されています。しかしながら、稚魚図鑑を見てみると、マンボウ類の仔稚魚期には、普通の魚と同じ形の尾鰭があるように見えます。尾鰭は元から無いのか? 成長過程で消えるのか? どっちが本当なのか? 先日発売された『日本産稚魚図鑑 第二版』をよく読むことで、その答えが見えました。



 『日本産稚魚図鑑 第二版』の知見より、結論から先に言うと、「マンボウ類は元から尾鰭が無い」とのことです。その理由は2つ。

@仔稚魚期に尾鰭条が出現しない。
A仔稚魚期に脊索後端の上屈が起こらない。

 では、一般的な形になる前の仔稚魚期の尾鰭みたいなものは何なのか?

 答えは「膜鰭(finfold, primordial fin)」と呼ばれる鰭で、一般的に仔魚が成長する過程で、この膜鰭は退縮し、代わりに尾鰭・背鰭・臀鰭などが形成されます。
 しかし、マンボウ類は成長途中で背鰭や臀鰭が形成されても、尾鰭の要素が形成されません。なので、マンボウ類に尾鰭はありません。仔稚魚期にみられる尾鰭のようなものは、「膜鰭」です。

 しかしながら、『日本産稚魚図鑑 第二版』では尾鰭が無いと言いつつも、尾鰭という表現が何度も出てきて混乱します。
 本書で言う尾鰭とは、単に「尾部側にある鰭」を意味するのであって、つまり舵鰭と同意義です。マンボウは特異な形態をした魚なので、一般の魚での表現が難しいのでしょう。ややこしいですが、本書では尾鰭=舵鰭で、尾鰭と表現していても、他の魚で言う尾鰭とは異なって、マンボウ類に尾鰭は生まれた時からありません。

 ちなみに、マンボウの他で、尾鰭が無い魚はタチウオのようです。

 2014年4月5日作成 


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