古い(1900年以前)ヨーロッパにおける長さの単位

 古い文献を漁っていると、計測している文献が見付かったりするのですが、長さの単位が日本人には馴染みのないもので、理解するのに苦労した記憶があるので、私がわかった範囲をメモ書きします。


現在、日本で一般的に馴染みのある長さの単位は、mm、cm、m、kmといったメートル法に準じたものですが、メートル法が導入される前のヨーロッパでは独特の長さの単位を使っていました。

大きい単位から、foot(ft足の幅に由来)、inch(in親指の幅に由来)、line(ln)です。足や手の指、線の長さをモチーフとしていたようです。
1 foot = 約30.5 cm、1 inch = 約2.5 cm、1 line = 約0.2 cm。
lineという単位は、1824年以前のイギリスでよく使われ、古い文献の長さの単位では一般的に使われていたようです。
また、1799年以前のフランスでは、footの代わりにピエ(pied)、lineの代わりにリーニュ(ligne)、inchの代わりにプース(pouce)が使われていました。
1ligne =2.25 mmで、1line =2.12 mmよりも少し長いです。

イギリスの場合: 1 foot = 12 inches / 1 inch = 12 lines / 1 line = 2.12 mm と変換できます。
フランスの場合: 1 pied = 12 poucees / 1 pouce = 12 lignes / 1 ligne = 2.25 mm と変換できます。


他のヨーロッパでも同じような定義でそれぞれの国の言葉で長さの単位が使われたようです。
イギリス: foot / inch / line
フランス: pied / pouce / ligne
イタリア: piede / pollice / linea
スペイン: pie / pulgada / linea
ポルトガル: pe / polegada / linha
スウェーデン: fot / tum / linje
オランダ: voet / duim / lijn


それでは、実例として、いくつか文献を見てみましょう。

1.Retzius (1785) (スウェーデン語)の場合


この場合は、1 fot 11tum 0linje = 1foot 11inches =58.42 cm と読むことができます。


2.Ranzani (1839) (ラテン語)の場合
この場合はラテン語で書かれており、また長さの単位が書かれていません。


ラテン語も独自の長さの単位がありますが・・・同じような長さの定義なので、著者の出身国に当てはめればいいのではと思います。
Ranzani (1839)の出身国 はイタリアで、フランスの隣なので、1piede 6pollice 3linea =約50 cmと読むのが妥当でしょう。


【追記】長さのメートル法が生まれたのは1789-1791年のフランスで、これが現在の世界基準になっている。
ソース1 ソース2 ソース3


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また重さの単位も世界基準はフランスが発祥。1795年には既に1リットル=1sの定義ができていた。正式に決まったのは1889年。
ソース1 


 ・フランスの重さの単位はliver(リーブル)が使われ、これはpound(ポンド)(=約500g)に相当する。
ソース1 


 ・イギリスポンドとアメリカポンドはわずかに重さに違いがあった(現在は統一されている)。古代ローマの1ポンドは約329g相当。古いヨーロッパ各国では重さの基準は違ったが、1ポンドあたり350〜560g相当を指していた。
ソース1 


 ・古いスウェーデンには「Skålpund」という重さの単位があり、デシリットルみたいな今では見かけないような記号を用います。
 1 Skålpund = 425 g(現代換算) で、1 Skålpund = 当時の1ポンドにあたります。
 例えば、下記の場合は、400 Skålpund(400 pounds) =170kg となります。
 

ソース1 ソース2






 2015年4月14日作成 


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