メディア考察1(世界の果てまでイッテQ!)

 私はあまりテレビを見ない方なのですが、マンボウの特集がされるということで、番組を見てみました。奇麗な映像も十分な研究材料になります。ここではテレビ番組で用いられたマンボウ類に関する情報について考察してみようと思います。なお、いくつか画像を載せていますが、これらの画像は製作者の方々に帰属します。何か問題があればご連絡下さい。



【情報ソース】 世界の果てまでイッテQ!『珍獣ハンターイモトワールドツアーinインドネシア』(2011年7月31日放送)by 日テレ



1.インドネシアにてスキューバーダイビングで二日間マンボウ探し →しかし、見付からず



 もし、インドネシアのマンボウが映っていたらどんな形態をしているか見たかったのですが・・・テレビでは地元の人がマンボウが見られるようなことを言っていましたが、インドネシアでの出現記録はほとんどなかったように思います。


2.マンボウを探して世界各国に問い合わせ →千葉県のマンボウランドへ



ここはマンボウと一緒にダイビングができるということで有名ですね。世界広しと言えど、日本ほどマンボウを水族館で飼育展示しているところはないでしょう。まさにマンボウ大国日本です!!


3.マンボウの生態についての紹介 →「1回の産卵で3億個の卵を産む」



よくテレビでこういった風に紹介されるのですが、厳密に言うと、これは正しくありません。正しくは、「1個体の雌が3億個以上の卵を卵巣内に保有していた」です。Schmidt(1921a)の知見ですね。こういった一尾の雌が体内に保有している卵巣内卵数のことを、「孕卵数」または「抱卵数」と言います。英語では「batch fecundity」。マンボウの「産卵数」についてはまだ誰も見たことがありません。マンボウがどのように産卵するのかも一切謎に包まれたままです。


4.「1回の産卵で3億個の卵を産む」→「生き残るのは2〜3尾」



 これは、「どれだけの個体が死んでしまおうが、少なくとも雄と雌1個体ずつが生き残れば次世代の子孫へと繋げることができる」という生残理論に基づいた知見ですね。忘れましたが、こういう記述は論文で読んだことがあります。実際にどれだけ生き残るのかは全く不明です。しかし、海がマンボウだらけにならないことからすると、相当の数が食べられているのでしょう。

★ここで1つ考察ポイントです! 画像の中の赤矢印に注目して下さい。この画像のマンボウは舵鰭が波打っているのが見てとれると思います。このことから、おそらく、マンボウ(Mola sp.B)と推測できます。


5.「生き残るのは2〜3尾」→「必死になって生き残ろうとするからすごい形になる(稚魚)」



 マンボウの幼体として紹介されているこの写真。実はこれ、マンボウではなく、ヤリマンボウの稚魚です。提供元のサイトの方にもちゃんとヤリマンボウと書いてあったと思うのですが、これはちょっといい加減ですね。


6.「必死になって生き残ろうとするからすごい形になる(稚魚)」→「時にはビッグサイズにまで成長する」



 ここまでの流れの持っていき方はさすがテレビです。さて、巨大マンボウとして紹介されているこの映像のマンボウ、正確にはマンボウではありません。オレンジ色の矢印に注目して下さい。管理人らのこれまでの研究結果をもってすると……2m超えで、頭部が隆起し、舵鰭に波型がないことから、ウシマンボウ(Mola sp.A)と考えられます。この映像はニュースか何かで見た覚えがあります。確か、これも千葉県だったような。


7.「日光浴する」→「太陽光で体を消毒 寄生虫を追い払う」→「sunfish」



 マンボウが水面で体を横たえるこの現象、日本では一般的に「マンボウの昼寝」と呼ばれているものと思っていたのですが、この番組では「日光浴」と表現していましたね。「太陽光で体を消毒・寄生虫を追い払う」ということも可能性の一つに挙げられますが、実は何でこんな行動をするのはよくわかっていません。英語では「ocean sunfish」と一般的に言います。単にsunfishと言うとブラックバスやブルーギルなどの総称サンフィッシュ科を指してしまうからです。


 この番組を見て、マンボウとウシマンボウ、ヤリマンボウが混同されてマンボウと呼ばれていること、形態学的な特徴が明確になれば映像からだけでも種の特定が推測できることがわかりましたね。 生残数についてはネットで質問も出されていますね。


 2011年8月3日作成 2011年8月27日更新


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