日本の呼び名(古語・地方名)

ここではマンボウ類が日本でどんな呼び名で呼ばれているのかをメモっていきます。(ここで取り上げる名称の多くは明確な種を指すものではなく、属レベルまたは科レベルのおおまかな呼び名と思ってください)。上付きの番号は末尾の文献からの引用を意味します。古語のみ、本や論文に記されているひらがなとカタカナは分け、地方名はすべてカタカナ表記とします。





マンボウ属

―――――――現代・標準和名――――――――

 マンボウ(カタカナ表記)

―――――――古語――――――――

 枯査(マンボウを指すか不明)? 「日本書紀」16
 まんぼお(飜車魚)4
 ウキキ(漂木・漂亀)・・・――「漂木のよに波間に浮遊する様;江戸時代中期以前」/マンボウは(満方)「体形に由来する?;江戸時代中期以降」12
 うきゝ(ひらがな表記)? 「高松松平家所蔵 衆鱗図, 1777」18


―――――――地方名―――――――

 ウオノタユウ・・・瀬戸内海12,16・愛媛・愛媛県越智郡14,16,17・広島17――魚の大夫14
 ウキ・・・岩手県1・宮城県6・東北地方9
 ウキキ・・・宮城県6・東北地方10,14,17・関東・東北15・茨城16・長崎17――流木のように海面を漂うから14、語源は浮き木(浮亀と書く場合もある=ウミガメの一種と考えられていた)15,17
 ウキギ・・・岩手県1・東北12,13,14・茨城県那珂湊・水戸13・山口県13・長崎17――流木のように海面を漂うから14,17

 ウキキサメ・・・東海地方――皮がザラザラしていることに由来=サメの一種と考えられていた。15

 オキナ・・・不明――「雪魚」という字を当て、北海の大魚(鯨類)の意。15

 オキマンザイ・・・新潟、広島15・土佐16――マンザイラクの語源から派生した言葉。15

 カマブタ・・・静岡県網代11

 キナボ・・・北海道――木の棒の意15
 キナボウ・・・北海道16
 キナンボ・・・北海道函館7,12・北海道11
 キナンポ・・・北海道函館11
 キナッポー・・・青森県上北郡14,15――木の棒の意15
 キノッポー・・・青森県上北郡14,15――木の棒の意15
 ギナメ・・・北海道16

 クイザメ・・・富山県9,10,12,14,15,17――杭鮫=海に浮かぶ棒杭のような魚の意15
 クイサメ・・・富山県
 クロマンボウ・・・沖縄県泊――アカマンボウと比較して「色が黒い」ことに起因する
 クンシャメ・・・富山県

 サキザメ・・・宮城県6・宮城県気仙沼19

 シオリカ・・・北陸地方15・紀州16

 シキリ・・・鹿児島県3,10,12,14,15,16――「しり切れトンボ」から派生した「尻切り」の意3,15
 シキレ・・・薩摩16――「尻切れの意」16

 シチャー・・・鹿児島県喜界島3,16

 タユウサン・・・大三島,大島,瀬戸其他(瀬戸内海各地)16・愛媛17・広島17――網に入ると漁が無くなる・疫病が流行ると言われ、「太夫さん」を招いて御祓をしたことから16
 タユー・・・愛媛県大三島10,14
 ニナボー(アイヌ語)14

 バラバア・・・山口県小野田10,14,16
 バラバー・・・大分県11
 バン・・・愛媛県三瓶町
 バンバラバン・・・愛媛県三瓶町――「身がバラバラになりやすい」ことから
 ババラボウ・・・周坊大島16

 バーバラボー・・・大分県11

 ホンマンボウ・・・静岡県網代&稲取11

 マンザイラク・・・神奈川県14,15・三崎(相州)16――暴れた場合、マンザイラクマンザイラク(危険な時や驚いた時に唱える厄除けの語)と唱えたら静かになる。15
 マンハウ・・・不明15
 マンブ・・・長崎県壱岐10,16
 マンプ・・・長崎県壱岐9
 マンホウ・・・不明。15
 マンボ・・・静岡県駿河湾8・千葉県11――マンボウの言葉の訛8
 マンボウ・・・沖縄県泊・岩手・岡山・茨城・和歌山・三重15――「万本釣りを試みないと釣れないから」ことから。稀有、――体が円いから or 子供が持つハスの葉の袋(萬宝という)に形が似ているから。15・気仙沼19
 マンボザメ・・・岩手県1
 マンボウザメ・・・宮城県6
 マンボロ・・・高知県須崎5,10

 マンボオ・・・神奈川県 三崎(相州)10,16・和歌山県10・紀州16・高知県10・富山県10,16・伊豆16

 ナンボウザメ・・・北海道15

 ユキイカダ・・・南西部を除く茨城県14、新潟15――「肉が雪のように白いところ」から14、「雪筏」と書く。「ユキ」はマンボウの白い肉や腸を表わしている15
 ユキナメ・・・新潟県寺泊2・新潟県三島郡14・新潟県出雲崎17・新潟15,16――新潟では「雪滑」と書く。一般的に「雪魚」と表記されるが読み方は不明で、山下(1993)が読みを与えた。「ユキ」はマンボウの白い肉や腸を表わしている。
 ユキヨ・・・新潟県越後2

 ヨキヨ・・・新潟県越後2



ヤリマンボウ属

―――――――現代・標準和名――――――――

 ヤリマンボウ(カタカナ表記)

―――――――古語――――――――



―――――――地方名―――――――

 マッカブ・・・宮城県6
 マンボウ・・・新潟県11・長崎県11

 ミズマンボウ・・・高知県以布利&室戸――「火を通すとマンボウより水分が多く出てきて、身もマンボウより小さく縮まる」ことから

 ギンマンボウ・・・高知県高岡




クサビフグ属

―――――――現代・標準和名――――――――

 クサビフグ(カタカナ表記)

―――――――古語――――――――

 くさびふぐ4
 クサビマンボウ8――田中博士が1934年に名付けた8


―――――――地方名―――――――

 ボンボイチ・・・石川県11




マンボウ類(マンボウ科総称)

―――――――古語――――――――



―――――――地方名―――――――





<<マンボウの記述が無いとされる古文献>>
古事記16
萬葉集16
風土記16
延喜式16
和名抄16
新撰字鏡16



【引用文献】
★.筆者の聞き取り調査
1.井田(1992)
2.本間(1992)
3.白井(1985) 
4.田中(1927) 
5.蒲原(1950b) 
6.古川(1993)
7.上野(1966)
8.黒田(2007)
9.石川(2010)
10.蒲原・岡村(1996)
11.相良・小澤(2002)
12.山田ら(2007)
13.浅野(1956)
14.川崎(2004)
15.山下(1993)
16.澁澤(1943)
17.内田(1979)
18.香川県歴史博物館(編)(2002)(高松松平家所蔵 衆鱗図, 1777と同じ内容)
19.佐藤ほか(1987)


 2012年8月5日作成 2017年4月11日更新 


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