マンボウと水温
最近、マンボウの北海道での大量漁獲が話題になっているのを知ったので、それについて少し考察したいと思います。ニュースなどあちこちから引用しますが、著作権は各ニュースの発信元に帰属します。何か問題がありましたら、メールにご連絡下さい。
まず目に入るのが9月8日のこちらのニュースですね。
MSN産経ニュース より転載。
産経以外でもたくさん取り上げられていますが、どのニュースも内容はだいたい同じようです。
一番最初に記事にしたのはこちらのようです。
ここでやはり目を引くのは「一つの仕掛け（網１カ統）で800匹」も獲れたこと。
一度の漁獲で100匹程度でしたら聞いたことはありましたら、一度の漁獲で800匹は聞いたことがありません。恐らく、だいたいの感じで載せていると思うので正確には数えていないと思いますが、かつてないくらい多いということでしょう。
大きさは50㎝前後、体重4～5㎏の小型個体が多いようです。
これが釧路でのニュース。秋サケ定置は8月末から始まるようですね。
ニュースを検索していると、9月10日に紋別港で全長175㎝、体重300㎏の死んでいる個体が漁獲されたという情報もありました。
ニュースでは対馬暖流と宗谷暖流に乗ってくると書いてありますね。
マンボウが大量に漁獲される原因は「水温の上昇」という見方が示唆されていますが、これはおそらく当たっていると思います。何故なら、いくら皮が厚くなると言っても、マンボウも側線をもつ一般的な魚だからです。
澤井ら（2011）によると、マンボウの三陸沖に出現する表層水温は約12～26℃の範囲で、16～19℃の範囲が出現頻度が高いと報告しています。
2012年8月31日発表に気象庁が発表した8月下旬の海面水温の診断を見てみると、平年より水温が高い状態が続いているようです。この理由は、風が弱く、日照時間が多かったため。一ヵ月は平年より高い状態が続くとの予想です。
同じく気象庁の日別海面水温のページで実際に海面水温を見てみても、今年の8月下旬からの水温は例年より高く、マンボウが出現する適水温の範囲に入っていることがわかります。もしかしたら、北海道では未確認の南方系であるウシマンボウも出現しているかもしれません。
しかし、この時期（夏季）にマンボウが北海道周辺にいることは至って普通です。これはDewar et al.(2010)の衛星追跡調査によって明らかになっています。しかし、通常この時期は沖合にいるのですが、今年は沿岸部も水温が高いため、沿岸部に進出してきた結果、大量に漁獲されるはめになったものと思われます。
こうして一度に大量に漁獲されるのをみると、小型個体は群れを作って回遊していることがよくわかりますね。
水温が高い影響と思われる回遊魚は、マンボウ以外にもジンベエザメが小樽に出現したり、日高沖に暖流性のブリが大量混獲されたりしているようです。
実はマンボウの北海道（釧路）での大量漁獲は2006年8月下旬にもニュースになっていて、高水温がその要因とされています。
気象庁の2006年9月4日発表に気象庁が発表した8月下旬の海面水温の診断を見てみると、やはり平年より水温が高かったようです。
今回の北海道でのマンボウの大量漁獲は、地球温暖化、大地震の前兆現象に関連するとも言われているみたいですが、上述したように、原因は、今年の8月下旬の北海道周辺海域の風が弱く、日照時間が多かったため水温が下がらず、通常この時期に沖合にいるマンボウが温かい沿岸域にも進出してきたためと思われます。この水温上昇を一言で言うなれば、単なる環境変化ではないでしょうか？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊追記＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
去年からちょうど一年が経ちまして、今年は早期から海水温が高いという情報を聞いていたので、今年も北海道にマンボウがたくさん回遊するのではないかと予想していましたが・・・やはり去年同様に、今年もマンボウがたくさん獲れ始めたようです。
NHKニュース より転載。
気象庁の2013年8月29日発表の「北海道周辺海域 日別海面水温」を見てみると、釧路の表層水温は19～20℃のようです。
同じく、気象庁の「北海道周辺海域 日別海面水温」から、画像を拝借して、釧路の過去3年間の8月29日を見比べてみると、ニュースにならなかった2011年に比べて、水温が2℃高くなっていました。
上記で既に述べたように、この時期にマンボウ集団が北海道周辺にいることは普通です。
しかし、沿岸域に集中して出現するというのは、非常に気になるところです。
餌が多いのか？ ハッキリしたことは環境調査をしてみないことにはわかりません。
もし、来年も海水温が高くなるのであれば、これからもマンボウは夏季に北海道でたくさん獲れるようになる可能性があります。
2013年8月30日作成 
Top
