掃除共生

 世の中は助け合って生きていくものですが、それは水中の世界でも同じことのようです。ここではマンボウ(以下、この記事で言うマンボウとはマンボウ属魚類の総称を指す)を掃除する(表皮の寄生虫を食べている)魚や生き物の知見を紹介します。

Todd and Grove(2010)
 掃除魚ではないが、「ガラパゴス初記録のヤリマンボウで、数尾のブリモドキThe pilot fish (Naucrates ductor)幼魚と一緒に泳いでいた。」

Potter and Howell(2010)
日光浴行動はまた寄生虫を取り除く機能としてマンボウに有益かもしれない。マンボウは40以上の異なる属の寄生虫を持つことが知られている。水面での日光浴は上から海鳥と同様に、下から掃除魚を誘いそうである。その両方は報告によればこの種に関連する(Cartamil and Lowe, 2004;Pope et al., 2010)。 

白鳥(2008)
 小さな魚や海鳥は日光浴中のマンボウの体にいるコペポーダの寄生虫を食べてクリーニングする。half-moon fishの稚魚はマンボウに付いてせわしなく動いていた。マンボウの体から寄生虫を突いているのだ。大瀬崎ではチョウチョウウオ属のシラコダイがマンボウをクリーニングする。

Konow et al.(2006)
 インドネシアのレンボンガン島沖での海中観察で,ミゾレチョウチョウウオ Chaetodon kleinii ,ムレハタタテダイ Heniochus diphreutes ,ホンソメワケベラ Labroides dimidiatus ,オトメベラ Thalassoma lunare ,タテジマキンチャクダイ Pomacanthus imperator の5種がマンボウの表皮に付いている寄生虫を掃除しているのを観察した。
 掃除中のマンボウの舵鰭には潰瘍がみられた。これはタテジマキンチャクダイが丈夫な下顎を持っているせいで,寄生虫を食べようとした結果,マンボウの表皮まで食いちぎっている可能性がある。カリフォルニアのモントレー湾では,カモメが水面に浮いているマンボウの上に乗り、同じように掃除しているのが観察されている。

Vogelnest(2003)
 マンボウが水面にいる時、しばしばカモメが同行する。たぶん、マンボウの皮膚の寄生虫を食べるためであろう。

臼井(2002) 皮膚に付いた寄生虫を流れ藻についている小魚や 鳥にクリーニングしてもらうために、マンボウは流れ藻と一緒に海流に乗って泳ぎ、ざぶとんのように水面をただよう。

益田・小林(1994)
 カリフォルニアのモントレー沖は、マンボウがウミタナゴ類に体表につく寄生虫の掃除をさせるために集まって来る有名なポイントである。

Gotshall(1967)
 ・モントレー湾の昆布棚周辺でマンボウを掃除しているセニョリータ(海外のベラ科 Oxyjulis californica)を観察した(Limbaugh,1955)。
 ・ Phanerodon sp. ( Phanerodon atripes ウミタナゴ科のシャープノーズシーパーチ)がマンボウのまわりを囲んでつついていた。また、Hypsurus caryi ウミタナゴ科のレインボーシーパーチもシャープノーズシーパーチと一緒にマンボウの体を掃除しているのが観察した。



大きな魚が他の生物に寄生虫を取ってもらう目的で、食べてもらうこの行動は「掃除共生」と呼ばれています。大きな魚にとっては煩わしい寄生虫を取ってもらう利点があり、掃除生物は寄生虫という餌をもらえる利点があり、双方にとって有益なシステムですね。

最後に、YOUTUBEで拾ってきたマンボウが掃除魚にクリーニングしてもらっている動画を紹介します。
     

**********************************************************************************************

時代が進むと少しずつ生態が明らかになるもので、海鳥がマンボウの寄生虫を掃除している論文が出ました!!

Abe et el.(2012)
 コアホウドリやクロアシアホウドリが昼寝中のマンボウ(推定上Mola sp.B)の外部寄生虫を食べている映像の撮影に成功した。

新聞にも取り上げられていたので紹介します。著作権は新聞社に帰属します。問題がありましたらご連絡下さい。

**********************************************************************************************

2011年にポルトガル調査でお世話になったmobulamobular氏のブログで、興味深い話が書かれていたので、許可を頂いてこちらでも取り上げさせて頂けることになりました。

 ポルトガルの定置網で漁獲されたマンボウを一定期間飼育(たぶん水族館に引き取られるまで)していた時に、ブラックフィッシュCentrolophus nigerや ブリモドキNaucrates ductorが始終、マンボウと寄り添うように一緒に泳いでいたそうです。
 ブリモドキがマンボウと一緒に泳ぐのは上記のTodd and Grove(2010)でも観察されていますね! 
 また、水槽内ではマンボウの側面にクロコバンRemora brachypteraがくっついているのも見てとれます。
 もしかしたらブラックフィッシュとマンボウの行動は初めての知見かもしれません。記事の詳細は下記リンクより。

その1 その2 記事作成2012年6月21日
  **********************************************************************************************

「World's Weirdest - Seagulls Help Sunfish」という名前で2012年10月10日にYOUTUBEに投稿されたカモメがマンボウの外部寄生虫を取る瞬間を水面下から撮影した動画(投稿者はNatGeoWild)。



 2011年2月25日作成 2014年10月5日更新


Top