マンボウウシマンボウカクレマンボウ



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【速報&注意】日本魚類学会の「日本産魚類の追加種リスト(2013年2月26日付け)」にウシマンボウMola sp.AとマンボウMola sp.Bが追加されました!
 また「日本産魚類検索 第三版 全種の同定」にも同様にウシマンボウとマンボウが別種として記載されています。

 なお、それに伴って注意されたいのは、外部形態からマンボウ属2種を識別できるのは全長1.8m以上です(頭部の隆起で識別する場合は2m後半以上じゃないと難しいです)。
 日本近海ではウシマンボウの小型個体が今のところ見付かっていません。
 日本近海の全長1m以下の個体はDNA解析の結果、すべてマンボウでしたので、今のところマンボウと考えて頂いて良いかと思われます。

 2013年3月21日 →2013年4月13日

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 前回、マンボウ科魚類の仲間について簡単に紹介しましたが、ここでは日本近海に出現するマンボウ属魚類について少し詳しく紹介しようと思います。

   一般的に水族館で目にする「マンボウ」はマンボウ属に属する種類です(ごく稀にヤリマンボウが展示されることもありますが、飼育が難しく、長期間展示できないようです。しっぽが突き出ているヤリマンボウを水族館で見られた方は超ラッキーです)。

 マンボウ属はマンボウの仲間の中で一番よく漁獲される種類ですが、これは日本だけに限らず、世界的に見ても同様の傾向があるようです。

 なので、過去には世界各地で、変なの獲れた! 新種だ! と論文が出された結果、30種以上になったこともあります(Parenti, 2003)。

 しかし、Fraser-Brunner(1951)によって、30種以上提唱されたマンボウ属は、こいつとこいつは一緒だろ、と情報が整理され、マンボウ Mola mola とゴウシュウマンボウ Mola ramsayi の2種に絞られました。2種のうち、ゴウシュウマンボウは南半球にしか分布しないため、日本近海にはマンボウ1種のみが出現することになります。

 Fraser-Brunner(1951)が情報整理したことにより、その後はマンボウ属2種で安定していたのですが・・・ゴウシュウマンボウに関する情報は少なく、本当に存在するかどうかは不明確な点が多く残されていました。

 そんな折、Bass et al.(2005)が世界各地からマンボウ属を集め、遺伝解析を行いました。その結果、マンボウ属は2つの大きな集団に分かれることが明らかになりました。

 やっぱりゴウシュウマンボウはいるのではないか? そんな期待が高まる中、Yoshita et al.(2009)が独自に集めたサンプルとBass et al.(2005)のデータを解析し直した結果、世界に分布するマンボウ属は3つの大きな集団に分かれ、それぞれの遺伝的距離は別種レベルに離れているということを明らかにしました。この遺伝的に分けられたマンボウ属3種を仮にMola spp.A-Cと名付けました(正確には論文中にはGroups A-C)。

 ここまでの話の流れを簡単にまとめると、以下の図のようになります(上記の説明よりもう少し詳しく書いています)。


 管理人はYoshita et al.(2009)の研究を受け継ぎ、研究を行っています。
 さて、ここで登場した、このサイトの名前でもあるウシマンボウ
 ウシマンボウとは何者なのか? これについてここから説明しようと思います。

 Bass et al.(2005)によって、マンボウ属に2つの大きな集団の存在が明らかになった同年、偶然にも、相良ら(2005)が日本近海に出現するマンボウ属魚類について、Bass et al.(2005)と同じ方法で遺伝解析を行っていました。

 すでにお話したように、ゴウシュウマンボウは南半球に分布する種とされていたので、日本近海に出現するマンボウ属はマンボウ1種と考えられてきました(e.g., Hatooka, 2002)。しかし、相良ら(2005)の発表により、日本近海に出現するマンボウ属は大きく2つの集団に分かれることが示唆されました。相良ら(2005)はそれぞれの集団を仮に、A群B群と名付けました。

 相良ら(2005)の後、少し上でお話ししたYoshita et al.(2009)によって、日本近海に出現するマンボウ属2群は、遺伝的距離がそれぞれ種レベルで離れていることがわかったため、マンボウA種B種と呼び名が変わりました。

 しかし、A種B種という呼び名では呼びにくいため、学名の決定はまだにしろ、日本においてはそれぞれに和名を付けて呼び分けようということで、A種ウシマンボウ(新称)B種マンボウという名前が付けられました(山野上ら,2010)。A種にウシマンボウという新和名を付けた理由は、Yoshita et al.(2009)の研究により、B種の形態的特徴が一般的にマンボウと呼ばれている種の特徴に近いという結果が発表されていたので(形態的特徴については他の記事で紹介します)、B種にはマンボウという名前を割り当て、A種にはそれ以外の名前を付けようということで名付けられました。ウシマンボウの由来は、東北の漁師が2種を識別していた地方名の中から採用されました。

 日本近海のマンボウ属の流れをまとめますと、以下の図のようになります。


 以上のように、ウシマンボウは2010年に名前が付けられたまだまだ新しい種類のマンボウ属の仲間なのです。

 しかし世界は広い。マンボウ属の種類が3種以上いる可能性は十分にあります。またヤリマンボウ属やクサビフグ属の中についても複数種いる可能性は十分にあり得る話で、マンボウ類はまだまだ謎の多い魚なのです。

 と前回ここまで書きましたが、マンボウウシマンボウ、両種が一体どんな形をしているのかは触れていませんでしたね。

 安延(2011)で両種の形態を記した図が出版されたので、こちらでも紹介したいと思います。はい、下記の図が両種の典型的な形態を表わした図です。左がウシマンボウ、右がマンボウ。違いがわかりますか? パッと見たらどちらも同じマンボウ≠ノ見えるのですが、よ〜〜〜く見ると形が違います。黒矢印にあるところに注目して下さい。ウシマンボウは頭部が隆起し、舵鰭の波型はほとんどみられない一方、マンボウは頭部が隆起せず、舵鰭に明瞭な波型を持つことがわかります。しかし、両種の種の特徴を表わしている識別できる体サイズは2m以上に限られます。なぜなら、ウシマンボウの小型個体が日本近海では漁獲されないため、どんな姿をしているかわからないのです。

ちなみに、遺伝的裏付けのあるマンボウの世界最大個体は全長277p、ウシマンボウの世界最大個体は全長332pです(吉田ら,2005;Yoshita et al., 2009;安延,2011)。

追記@

日本近海のマンボウ属2種は遺伝的にも形態的にも異なります。さらに、生態的にも異なることがわかってきました!!

澤井ら(2011)によると、三陸地方に出現するマンボウ属2種の出現状況を比較した結果、マンボウは調査期間、雌雄ともに様々なサイズが出現したのですが、ウシマンボウは7〜8月のみに全長2m以上の♀個体のみが出現した、と出現状況が異なることが報告されています。

また、両種の出現水温も異なり、ウシマンボウは16.8〜25.6℃の表層水温に出現した一方、マンボウは11.5〜25.6℃の表層水温に出現したそうです。両種は検定でも有意差があり、ウシマンボウの方がマンボウより出現水温が高いことが報告されています。

ウシマンボウマンボウは生態的にも異なり、やはり別種だったということが濃厚になってきましたね。他にはどんな違いがあるのか、気になりますね。

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時は過ぎ去り、Yoshita et al. (2009)から8年後の2017年7月20日「Nyegaard M, Sawai E, Gemmell N, Gillum J, Loneragan NR, Yamanoue Y, Stewart A. 2017. Hiding in broad daylight: molecular and morphological data reveal a new ocean sunfish species (Tetraodontiformes: Molidae) that has eluded recognition. Zoological Journal of the Linnean Society」という論文が発表されました。

何を隠そう、これは125年ぶりのマンボウ属3番目の新種の発表です!

新種と判明したのは、何となくそんな気がしていたC種C種は学名Mola tecta 和名カクレマンボウと命名しました。「カクレ」の語源は、カクレクマノミなどの何かの物に隠れるという習性的な隠れの意味ではなく、「これまで分類学者の目を欺き他のマンボウ類に紛れて隠れてきた」という意味で、ラテン語のtecta(隠れるの意)に由来し、英名では人を欺くという意味合いの「Hoodwinker sunfish」が付けられました。

カクレマンボウの分布域は南半球。今のところ日本を含む北半球では確認されていません。

カクレマンボウの最大個体は全長242p。

カクレマンボウの大きな外観的な特徴は、舵鰭が真ん中だけ1つ凹み、その凹みに向かって、帯がまっすぐ延びることです。この帯を「後延帯(smooth band back-fold)」とでも名付けましょうか。後延帯が明瞭なのがカクレマンボウの特徴ですが、ウシマンボウマンボウの中には極稀に後延帯を持っている個体がいるので注意が必要です。



ここまでの分類の研究の流れをまとめると、マンボウウシマンボウカクレマンボウの学名は以下のようになります。マンボウウシマンボウの学名は「(仮)」状態なので、さらなる調査が必要です。





 2011年2月17日作成 2017年7月21日更新


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