万研列伝

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 Wilson, E. O.の推定によれば、地球には約1000万種の生物が生息しているといわれている。
 しかし、人類は未だ地球上すべての種数を正確に把握できておらず、また各種の生態はそのほとんどが未解明なままと言っても過言ではない。
 特に、ヒトが手を伸ばすには限りがある大海原に棲む巨大生物達は……

 『マンボウ科魚類』――動物界唯一の背腹対象の翼を持ち、脊椎動物最多の孕卵数を秘め、硬骨魚最重量に成長する、尾鰭を持たない通常の魚類からかけ離れた形態を有したフグの仲間。

 この魚に興味を抱いた博物学者は数知れず。
 しかし、彼等の多くは社会的地位を確保するために、短期間の研究後、この世界を去って行った……

 世代交代し、研究者を変えることで新たな視点が開かれることはある。
 しかし、生物の生態をより詳細に捉えるならば、研究は長期間継続しなければならない。
 何故なら、生物は変動する環境に適応するために、常にこの地球上を移動し、進化し続けている。

 しかし、現世において、社会的重要度が高い(例えば美味しい)生物ならまだしも、特定の生物を一人の人間が長期間継続して研究し続けることは非常に困難である。
 加齢による社会的地位の獲得・向上は、ヒトが人間社会の中で生きる上で重要度が高く、ある時を機転に個々の興味関心よりもそれらの要素の必要性が上回り、知的好奇心の象徴たる『少年の心』は失われてしまう。

 だが、巨視的に捉えるならば、人類の知見として、生物各種の生態は早急に蓄積しておく必要がある。
 何故なら、今、地球は大規模な環境変動が起こり、特定の既知種は異常なほど数を増減させ、いつ何が起きてもおかしくない状態になっている。

 もしかしたら急激な環境変化が生じ、数秒後にも人類存続の危機に晒される出来事が起こり得るかも知れない。
 そんな時、生物学の知識は大いに役に立つ。
 生物学の知識は「いつ」「どこで」「どんな生物が」「何をしているのか」を予測することができる。
 究極的には、目の前の生物が「食べられる」か「食べられない」かの判断基準として用いることができるのだ。

 一定の地域を除いてマンボウ科魚類は社会的重要度(水産的価値)は低い。
 しかし、特異な生態や形態を有し、科学的関心は高く、社会的ニーズもある。
 これらの魚の生物学的知見を知りたい人は多いと思われる。
 かつては筆者もその一人だった。

 筆者はしかし、異常なまでにこの魚に魅了された。
 単なる物好きから脱し、自ら研究する者へと道を進んだ。
 それは人生をかけて、この魚の謎めいた生態を解明することに費やしてもいいと思うほどに。

 これは、筆者が挑む人生をかけたマンボウ研究の軌跡、私見にまみれた戯言や覚え書きの記録である――


(※ここでいうマンボウとはマンボウ属のことを主に指します。内容は美化されている所がありますので、フィクションとしてお読み下さい\(^O^)/)





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 2012年1月19日作成 2013年12月31日更新


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